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第一回 アグリコ写真コンテスト2003 受賞作品

【応募作品】 【大賞】 【映像技術大賞】 【映像技術賞】 【入賞】 【投票部門】 【総評】 【受賞作品講評】
(作品をクリックすると拡大してご覧いただけます)
大 賞
内海 孝
映像技術大賞
西野 直樹
映像技術賞
ネーチャン部門 農作物部門
月向 雅彦

白鳥 義彦

ネイチャー部門 国際交流部門
上野 直哉 鈴木 洋至
入 賞
ジンギスカン特別賞 おやつ賞 ファミリー賞
竹田 英一

朝倉 雪

山脇 紀子

「金!」賞 まぼろし大賞 風流賞
難波 貴司 池上 健一 山田 耕一
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総 評

冨田 きよむ 委員長

ピンからキリまで玉石混交というのが、一般的なコンテストなんですが、アグリコのコンテストはかなり違った様相を呈しました。正直に言ってここまでいい作品が集まるとは思っていませんでした。入賞作品のどれが大賞でもおかしくない。事実、大賞と映像技術大賞は、審査員の投票ではなく、「合意」という結果になりました。つまり、どっちでもよかった。「インパクトの強さ」においても、作品作りという点においても、優劣つけがたいものがありました。

惜しくも入賞を逃した諸君。
紙一重です。ほとんど差がないものをあえて選んだ結果と受け止めてください。しかし、その紙一重の差が、入賞につながるんです。 特に川瀬さんは最後まで議論の対象になりました。落っこちた理由はただひとつ。水平が取れておらず、画面が不安定だということだけ。非常に惜しかったです。



岩佐 義人 委員

たいへんレベルの高い作品揃いで、私、正直いってまいりました。どういう観点で審査すればよいのかと悩みましたが、結局、面白い作品、楽しい作品を優先しようと決めました…しかし、大賞に関してだけはそうも言っていられなかったのです。



横濱 勝博 委員

私はご存じの通り、写真の専門家でもなんでもなく、写真技術や芸術の勉強もきちんとしたことがありません。ただ、長く写真を撮ってきたことと、なぜか周囲に写真家、カメラマンの友人・知人が多く、自分で買う写真集や写真を含め、彼等から見せてもらって感想を求められる写真点数は一般の人よりは若干めぐまれているようです。今回のコンテストでは、そういう私から見ても感心させられるものが予想外に多く、特に巷に出回っているネイチャー写真や人物写真とは次元の違う、真摯で強いものでした。以前、冨田隊長が「いい写真は農家のHPにあるってことにしようぜ」とおっしゃってましたが、本当にそうなるだろう、という確信を持つことになりました。本物を見て触れているかたがたの方が、良いものを映像化する可能性はきわめて高いと実感させられました。皆様の日頃の奮闘に、敬意をあらわすとともに、感謝の気持ちで一杯です。本当にせんえつとは思いますが、役目ゆえ、率直な感想を書かせていただきました。



廣池 昌弘 委員

一言で言えば「ビックリ」です。本当に素晴らしい作品が集まって、ハイレベルなコンテストになりましたね。(^^) 皆さんの周りには、美しい風景や豊かな自然。そこで力強く働く人や暖かい家庭があって、至る所に「美」があふれている。それを改めて、強烈に認識させられました。皆さんにとっても、あふれる「美」を探し出し、見つめ直す良い機会になったのではないでしょうか。またそれを伝える術のレベルの高さ。「え〜あの人がこんな写真を!」と驚かれた方も多いかと思いますが、皆さんの「向上」にも驚きです。本当にまぐれでは撮れない。多くの方の「開眼」を見ました。1コマを求めて、立ったりしゃがんだり、走り回ったり、大変だったと思います。お疲れ様でした。コメントを書くのもおこがましいほど、素晴らしい作品ばかりですが、私は「そこにいる皆さんだからこそ撮れる写真」に重点を置いて審査しました。



小倉 克彦 委員(室蘭幼稚園園長)

どの作品も甲乙つけがたく選ぶのに大変悩みました。私の場合、技術的なことよりも心惹かれる写真、いつまでも見ていたい写真はどれかということを考え、選考いたしました。いずれにいたしましてもどれも素晴らしい作品ばかりで改めて写真の奥の深さを実感いたしました。



冨田 朋代 委員(ドライフラワーデザイナー)

この度、審査員をさせていただきました。自分なりに厳正に審査させていただきましたことをお伝えいたします。技術的にすばらしいもの、綺麗なもの、楽しいもの、迫力のあるものなど、賞をつける時も、大変楽しいものでした。今後もぜひ、すばらしい写真を撮りつづけてくださいますように、これからの技術と感性のご向上をお祈り申し上げます。



千田 康智 委員

私は大賞を選ぶときに作業に関する作品であるかに注目しました。 その中で内海さん、西野直樹さん、月向さんの作品からはその場の空気がよく伝わってきてとてもよかったです。甲乙つけがたく悩ましかったです。鈴木洋至さんの作品は少年の表情がよくとれていました。池上さんの作品は2枚目の作品が暗かったのがちょっと残念でした。そのほか、竹田さんの作品で3枚目のものが動きが見られてとてもよかったです。

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受賞作品の講評
大 賞
内海 孝
冨田きよむ
早朝に撮影したのが成功の大きな要因。光線状態が非常に効果的です。 低い撮影位置も、力強さを出しています。物を見る「目」の確かさを感じます。 いずれにしても、論評を寄せ付けない作品です。

岩佐義人
農業という労働の喜びと悲しみ、つらさ、決意がすべて表現された傑作。「面白いか面白くないか」を人生の指針にしておる私ですが、そういう虚業の開き直りをぶっ飛ばされた思いがいたします。

横濱勝博
画像から受けるインパクトが非常に強かったと言うのが率直な印象です。赤い車体に落ちる光と影、被写体の角度、全体を覆う粉霧、支柱の間隔までもが写真に動きと奥行きを与えていると思います。露出、焦点距離もベストであるような気がします。しかし、そういうパーフェクトな作品にも関わらず作画意図に埋もれていない、ストレートな映像にただ感服するばかりです。

廣池昌弘
物静かな内海さんに秘められた力強さを見た気がします。一番の驚き。
いつもの農作業をここまで見事な映像にした目と腕に脱帽です。
映像技術大賞
西野 直樹
冨田きよむ
ドラマがあります。物語性という点が一番注目されます。 泣けました。同時に、「こういう写真をとりたい」という強い意思が感じられました。作品を作り上げるという最も難しく重要なポイントをクリアしているところが高い評価をえました。同時に、作業中の自分を撮影するという困難な命題を見事にクリアしたという点は、他のメンバーに大きな影響を与えるでしょう。

横濱勝博
「夜のお仕事」はたったヒトコマの画像から時間を感じさせるものに仕上がっていると思います。カメラを向けた角度や被写体の表情、細かいところでは足の踏み出し方ひとつで印象が変わっていたかもしれません。ハウスのライトと被写体の関係も魅力的でした。ユリの写真は花の陰影や色の美しさはもちろんですが、葉に当たった光が柔らかく輝いているのが見飽きない要因だと思って見ていました。もちろんバックが黒く落ちているのも効果的です。ここまで完成度の高い写真を見ますと、あと数センチ前後に動いて撮り比べてみれば若干なりとも緊張感が生まれたかな、などと欲張りな自分になってしまいます。

廣池昌弘
夜を徹しての作業と、そこから生まれるゆりの花。その背景を知る者は泣かずにはいられません。しかし、作業風景の奥行きのある構図と、ゆりの花の背景を殺した写しこみも見事です。
映像技術賞
(ネーチャン部門)
月向 雅彦
冨田きよむ
月向君は、このくらい撮れて当たり前。おねーちゃんが正面を向いていないことが唯一最大の欠点です。審査員それぞれが、この点を非常に不満に思っております。

横濱勝博
組写真として完成度の高いものだと思いました。工房の空気、香りが伝わるのは、おいしそうな梅や美しい女性ばかりではなく、やわらかな光の効果なのだと思います。特に一枚目の画像は構図も美しく、見ていて安心感、清涼感が生まれます。惜しむらくは二枚目の構図を欲張ったと言うことでしょうか。右側を女性の「うなじ」あたりでとどめて。手もとの空間がもう少し広がれば、一枚目に見られた空間の妙味が増していたかもしれません。結果として手前の梅もわずかながら遠近感が出て、画像に「味」が出た可能性はあります。

廣池昌弘
「おねいさんが綺麗過ぎる」という反則技もありましたが、おねいさんと梅干の絶妙の構図と差し込む光で、何より清潔感を感じられる作品。さすがです。
映像技術賞
(農作物部門)
白鳥 義彦
冨田きよむ
わさびの別の顔を見せていただきました。見逃しがちなシーンをきちんと、しかもそれを美しく記録することの重要性を改めて認識させる作品です。縦写真が奥行きを与える効果を出しています。

横濱勝博
植物の写真は寄って撮りがちなものですが、絶妙に引いてみせたところが目を引きました。わさびの群生の中に、ところどころ赤い葉が散らばっていますが、この配置がとても良く、見る側に印象を与えて飽きがこない映像になったと思います。
露出はもう1/3から半分くらいしぼったら映像として締まったかもしれませんが、光をたっぷり浴びた健康的な畑の姿と考えることもできますので、難しいですね。ふとモネの睡蓮を思い浮かべました。ミーハーでしょうか(^^)

廣池昌弘
青々としたわさびの葉に赤々と紅葉が葉が舞い落ちている。伊豆にも安曇野にも無い、本当の山の中にある白鳥さんのわさび田だからこそある作物と自然の芸術。その時を見事に捕らえました。クローズアップ作品の多い中、広角で散りばめられた紅葉を撮られているのも新鮮で、広がりを感じられます。
映像技術賞
(ネイチャー部門)
上野 直哉
冨田きよむ
何を撮ればいいのか非常に迷った結果が見て取れます。迷いに迷った結果、非常にきれいにまとめてしまいました。技術的には問題ありませんし、画面も美しいのですが、それだけです。写真は技術だけではないということです。この作品は、困り果てた上野君の顔が浮かぶいい作品です。

横濱勝博
秋の風物詩を切り取ったこの映像は、絵本の挿絵のように穏やかで気持ちがいいです。
特に手前に横たわる葉の色、形の良いこと。着目点が良いのだと思います。構図や配色もやはり安定していて、非常に見やすく、きわめて美しい映像です。ただ、作画として「まとまりすぎた」という感じがしないわけでもありません。例えばこの中にたった一枚だけ緑に輝く葉があれば、映像は締まりを増す可能性もあります。違う物語が生まれたかもしれません。

廣池昌弘
紅葉と栗とどんぐり。ありふれた秋の題材ですが、その色や形、配置が見事にまとまっています。山の中のこの一点を探し出すのに苦労されたのではないでしょうか。
映像技術賞
(国際交流部門)
鈴木 洋至
冨田きよむ
文句ナシ。子供の視線から撮影したアングルの勝利。子供以外にも非常に豊かな表情が写っています。

岩佐義人
箱を持つ少年の笑顔、それを取り巻く大人たちの笑顔がすべてです。一瞬のシャッターチャンスを切り取るセンスの良さも光ります。

横濱勝博
この人数が映った写真で、これだけ豊かな表情でおさめられるのは大変なことです。
また「作業場」というタイトルと、この映像の組み合わせが作業場と言う場所を「生産」「労働」という側面から解放し、別な姿を現したと微笑ましく思うのです。この一コマの前後にあったであろう作業場の会話や楽しい時間までもが込められているのではないでしょうか。写真の持つひとつの力を存分に知ることのできる作品だと思います。

廣池昌弘
見事に全員の笑っている一瞬のシャッターチャンスを捕らえられました。シャッターチャンス賞とも笑顔賞とも言える作品ですね。

ジンギスカン特別賞
竹田 英一
冨田きよむ
この作品もセルフタイマーを使って撮影したものです。西野さん同様、作業中の自分を撮影するという難しいテーマをクリアしつつあります。カメラブレは見苦しいのですが、「被写体ブレ」は動感が表現されます。羊のブレが実にいいです。腹が減ると、わたくしもこうなります。

岩佐義人
組み写真の2枚目に「めしくれーめしだめしー」というフキダシを付けたく なりました。「面白い」「笑える」写真で、私は大好きです。

横濱勝博
被写体ぶれを果敢に使った意欲作ですね。
この3枚の作品はそれぞれいずれも良い写真だと思いますが、一枚目と三枚目だけの組写真であれば、さらに効果的だったかもしれません。動きを感じさせるブレを通して人間も羊も懸命に生きていることがもっとわかりやすく表現できたのではないかと思います。画面構成も力強く、本当にいきいきと写し出しています。

廣池昌弘
物可愛らしいだけではない羊の生きるたくましさを見た。そんな作品です。
組み写真としてテーマを絞ればさらに良くなったのではないでしょうか。
おやつ賞
朝倉 雪
冨田きよむ
朝倉君はこれくらい撮れて当たり前。次回は大賞を取りなさい。ただし、こういう写真を撮ってもらえる子供は幸せです。20年後、この写真を見たマイは、この頃のシチュエーションのすべてがありありとよみがえって涙が出るほど懐かしく思い出すでしょう。

横濱勝博
写真って本当に不思議だなぁと思わされるのです。
露出や画像としての鋭さは前半3枚なのですが、私にとって最も魅力的なのは、最後のケーキを手にした写真です。よくぞこの光、この表情をおさめた!という感じです。正面からの補助光も少なく、淡い色合いになりましたが、この背後、特に頬の両側からのライティングと言うのはプロのポートレートでも時々見られる手法で、実に魅力的なのです。もちろん手もとを撮った写真も秀逸で、パイ生地に落ちる影まで神経が行っているのが見て取れます。どれもが愛情こもっていますね。

廣池昌弘
ケーキの生地を作る娘さんの真剣な眼差しと、対照的な焼き上がった時の笑顔。おいしいケーキが出来たのでしょう。その表情の変化で緊張感と安堵感が伝わってきます。
ファミリー賞
山脇 紀子
冨田きよむ
自分の子供を撮影すると、どうしても「親」の視点になり、くだらない写真になります。撮った本人はかわいいと思っているんですが、他人にとっては見る価値のない写真が非常に多い。で、その域を越えることがないのが普通です。この写真は、子供をある意味で突き放して、表現の対象としているところが秀逸です。幼い子供のの凄みとか、妖しさを見事に写し取っています。母親の強さです。父親は、自分の娘をこうは撮影できないものです。

岩佐義人
レンズの手前にある母親の真剣な表情が想像できます。撮られていることを意識するようになる前のお子さんの無心な表情とあわせ、あたたかい母子の関係をリアルに感じさせます。

横濱勝博
お子さんのかわいい仕草、部分、いつも気にしている場面を切り取った、と言う感じの雰囲気が伝わる写真です。表情に応じて光の角度、明暗をわけて撮られているのも感心してしまいます。トリミングを使いながら構図を考える姿勢も意欲的だと思います。今後はノートリミングで構図のバリエーションが出てくると、もっといいなぁと思ったりもするのですが、子供の写真はそんなにお膳立てはそろわないものですよね(^^)実感しながらも日々精進しているのでした。。。

廣池昌弘
べったりではない親娘の微妙な距離を光と影で感じられる作品ですね。撮影に奮闘される姿が最も感じられる作品でもありました。
「金!」賞
難波 貴司
冨田きよむ
うちの猫はメス。オス猫は実に立派であります。金もさることながら、精悍な目つきが立派です。解説・論評の一切を寄せ付けない写真で、つまりそういう写真は作者の勝ちなんです。色々な金を見せてください。そういうHPがあると、わたくしはお気に入りのトップにいたします。

岩佐義人
エアロビ中の猫…という見方もできますが、やはり「金!」に視線が釘付けになります。

横濱勝博
「金!」賞にふさわしい作品が出てきました(笑)。でもやっぱり頭の上に足の肉球が見えてると猫好き心が騒ぐというものです。欲を言えば尻尾の向きが画面右下方向に・・・などと言ったところで猫くんにはかなわないのであります

廣池昌弘
この笑えるポーズと鋭い目つきのアンバランスが面白いです。
まぼろし大賞
池上 健一
冨田きよむ
NHKが世界に誇る名作シリーズ「新日本紀行」を髣髴とさせる写真です。文句ナシにうまいです。ドキュメンタリー写真のお手本です。行政担当者がこういう視点と、撮影技術を持ってくれれば、とんでもなく価値の高いアーカイブがたちまち出来上がります。行政マンにありがちな説明的でお説教的な匂いが微塵もない写真でありながら、見るものをして写真の裏をしっかり読ませる表現力の強さがあります。次回のコンテストでは、大賞を狙ってください。

横濱勝博
実は一枚目を見た時に涙が出てきたんです。ドキュメンタリーとしての強さと言うのもあるのですが、積み上げられたへしこの向こうに黙々と作業している女性の強さ、すごさだと思うのです。この画像を見て、彼女が何を思ったとか、撮影者が何を考えたとかいう以前に、えたいの知れない感情の方が先に出てしまいました。ドキュメンタリー写真として、パターン化した部分も見えかくれするのですが、この画像を撮ってくるだけでも撮影者の強さを感じずにはいられません。もちろん日頃の付き合いや、存在感が背景にあるのでしょう。見事です。

廣池昌弘
撮影者をものともせず、へしこを作る働く女性の強さが強烈に感じられる作品です。
風流賞
山田 耕一
冨田きよむ
フォトジェニックといいましょうか、テレビ的といいましょうか、映画のワンシーン的といましょうか、バランスのいい写真です。他にも数点ススキの写真があるのですが、その中ではずば抜けています。

横濱勝博
秋の夕暮れ、そして風が魅力ですね。空の空間を多くとり、風にそよぐススキを遠く
小さく見せることで雄大さと繊細さが表現されていると思います。見ていて安心できる風景、安らぐことのできる風景と言うのは本当に大切だなぁと思わされます。これからも沢山の風景を切り取ってほしいです。そういう観点から、まだまだベストショットではないはずで、もっともっと良い絵を見たい、と贅沢なことを思ってしまいます。

廣池昌弘
夕景は比較的簡単に撮れる題材ですが、その中に微妙に揺れるススキの穂がある事で、風を感じられる。まさに風流な作品です。
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