特定非営利活動法人 アグリコミュニケーション 設立趣意書
私達の社会は今、多くの課題を抱えているが、中でも生命と健康に直結する食の問題は極めて重要であり、安全性の高い食物が求められている。しかしながら、店頭にならぶ商品は産地、銘柄、添加物等の偽装表示が相次いで発覚し、消費者は表示を信用できなくなっている。このような状況の中で、大切なことは、情報公開である。農業の現場と消費者がそれぞれの情報を共有するところから、21世紀以降の社会のありようが見えてくると確信している。
農業者の中にもホームページを作成して情報発信をしている人たちがいる。農産物の販売にとどまらず、農村地域の総合的な情報も発信することによって地域興しにも大きな役割を果たしつつあるが、現場でそれを充分に活用できているかという点については、不十分であるといわざるを得ない。また、多くの新規就農者が都会から農業を目指すとき、農業経営を確立していく上で農産物の販売面でのフォローが必ずしも十分であるとは言いがたい。
1999年秋に全国の10数名の農業者を中心として発足した農業IT研究グループ「元気ねっと」では、自分で育てた作物を自分で責任を持って消費者に届けるための方策を模索してきた。その結果、現在会員数35名になり、それぞれのホームページのアクセスも順調に伸び、売上も当初予想をはるかに越える水準となった。元気ねっとでは、農業情報を単なる「農作物を販売するためだけの情報」「農業技術に関する情報」だけと捉えていない。
われわれ農業者が一番先に見据えるべきは、流通という仕組みではなく、末端の消費者一人一人である。その一人一人の消費者と如何にして信頼関係を構築できるかが、トレーサビリティの確立にとって欠かせない要件になるものと確信している。事実、元気ねっとメンバーのHPでは、栽培履歴を公表するにとどまらず、農薬の用法、公的な使用基準の公開、薬効などについても公開してきた。一見マイナスとも思える情報をも合わせて公開することこそが、消費者の信頼を勝ち得るのだ。
ゆえに、多くの農業者のホームページが低迷し、その存在の意義さえも疑われている現状を見るとき、元気ねっとメンバーがこれまで積み上げてきたホームページ制作とその運用方法を誰もが習得する必要性を痛感する次第である。
今回、消費者との密接な繋がりを築き上げてきた元気ねっとメンバーを中心として特定非営利法人を組織した。
関係機関、団体、個人と緊密に連携を取りながら、農業のITを強力に推し進めることが、当法人の設立目的である。パソコンを本来の意味での農機具として使いこなし、農業に関する情報を徹底的に公開し、消費者とともにコミュニケーション能力を互いに向上させ、農業を発展させる事を当法人の設立趣意とするものである。
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